アミのひとり言

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大飯原発運転差止請求訴訟判決

大飯原発34号機運転差止請求訴訟判決(福井地判平26.5.21)は、近年まれにみる、すばらしい判決だ。人間が人間らしく生きることのできる権利を人格権というが、この人格権が、大飯原発運転再開により侵害されるおそれがあるので、34号機の原子炉を運転してはならないと、差止め請求を認めた。(樋口英明・石田明彦・三宅由子裁判官
 
電気を作るための一手段にすぎない原発が、一旦事故が起こった場合、どのような結果をもたらすのか、福島の事故を何ら教訓にしていない関電(子ども)を諭す親のお言葉である。安全性を主張する関電は、地震学の理論に基づき、基準地震を最大加速度700 Gal想定して、更に余裕をみているので、1260 Galを超える地震が来ない限り、大事故に至ることはないと主張する。しかし、2008年発生した岩手宮城内陸地震中尊寺にもかなりの被害をもたらしたMag.7.2地震)では、4022 Galを観測しており、1260 Galを超える地震は想定外と言う前に頭を冷やしてこいと言いたくなる。しかも、岩手宮城内陸地震は、大飯でも発生する可能性がある、内陸地殻内地震だ。安全性を証明するために想定値を操作するのは人命軽視、人格権を無視するものだ。
 
現に、我が国の電力会社が想定していた地震動を超える地震は、過去10年以内に4つの原発に、5回到来している。日本列島は、太平洋プレート、オホーツクプレート、ユーラシアプレート、フィリピンプレートの、4つのプレートの境目に位置しており、全世界の地震1割が、狭い我が国の国土で発生する。この地震大国日本において、最大地震動を700 Gal1260 Galと勝手に設定するのは、根拠のない楽観論者であるから、無責任であり、人格権を否定するものだと関電を非難する。
 
しかも大飯原発34号機の敷地内には使用済み核燃料1000本以上がむき出しに近い状態で水槽内に保管されており、水につかっている状態が続く限り、すぐに問題が発生するわけではないが、巨大地震等の自然災害発生の場合、使用済み核燃料プールからの放射能汚染が、最も重大な被害を及ぼすと原子力委員会が指摘するとおりである。そもそも、原子力発電を続ける限り必ず発生する使用済み核燃料を、如何に処分するかについて何らかの現実的見通しもないまま、無責任に原発を再開するのは、未来世代に取返しのつかない禍根を残す。
 
高レベル核廃棄物の危険性が消えるには数万年~数十万年もの年月を要するから、使用済み核燃料の処分方法がないまま、原発を再稼働することは、道義的に許されるものではない。豊かな国土に国民が暮らしていることが国富であり、原発の運転停止により貿易赤字が増えたからといって、これを国富の喪失と言うべきではない。放射能汚染により、豊かな国土を取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると、裁判官は教えてくれる。ドイツ人・イタリア人などは、福島原発事故から重大な教訓を得て、原発廃止を決めた。関電は歴史から教訓を得る能力に欠ける人間の集団なのだろうか。