アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

300年に1度の地震予知に失敗した伊科学者らに禁錮4年を求刑

2009年4月6日午前3時32分(現地時間)イタリア中部ラクイラ(L'Aquila)で発生したマグニチュード(mag.)6.3の大地震は就寝時間でもありL'Aquilaを中心とする狭い地域で死者309人、負傷者1,600人以上の犠牲者を出し、レンガ造りの家屋の倒壊は20,000戸以上、一時的に避難者65,000名に上るものだった。東日本群発地震もかなり長期間続いているが、この時のL'Aquila群発地震は2008年10月から2010年5月まで約1年半続いた。

2009年4月6日の本震までに数百回に上る群発地震が観測されていた。歴史的にアペニン山脈系のこの地域はイタリア一の地震地帯とされ、中世以降では1461年、1703年、2009年の3回大地震が記録されている。この地域の家では古くから、揺れたら夜は外でテントを張って寝るよう代々言い伝えられてきたという。今回の群発地震の回数は1月69回、2月78回、3月100回。本震の約1週間前の3月29日にmag.3.9の地震があった。

今回の被告の一人Dr. Enzo Boschi(Bologna大学教授)らは3月30日の専門家会合で「これ以上の地震を心配する必要はない。地震は収束に向かっている。」と発表した。ところが3月29日のmag.3.9の地震の後に24時間以内に大地震が来ると予測し、被告の所属する国立地球物理学火山学研究所(INGV)に伝えた市井の研究者がいた。Giampaolo Giuliani氏は巨大地震の発生前に、岩盤のひずみからラドンガスが漏れ出て、地中のラドンガス濃度が上がると6~24時間後に地震が発生するという事実をつきとめ、ラドンガス濃度計測器を地中数ヵ所に埋めて地震発生の場所と時間を独自に予想し、マスコミにも発表していた。日本では、地球物理学者・上田誠也学士院会員(東大名誉教授)がラドンガスと地震予知の関係を研究している。

Giuliani氏の巨大地震予知をテレビで知った多くの人々が3月29日の夜野外テントで一夜を過ごした。しかし3月30日午後発生した地震はmag. 4.1で「巨大地震」とはいえず、INGVは彼を住民に不要な恐怖を与える偽地震預言者と決めつけ、以後彼が地震予想をマスコミに発表することを禁じた。

そうこうしているうちに4月4日、mag.5.9の大きな地震が発生した。INGVは緊急の会合を招集し、怯えている人々を落ち着かせるため、この地震でほとんどのエネルギーが放出され、これ以上大きな地震が発生する危険がなくなったと、安全宣言を出した。

翌4月5日Giuliani氏のラドンガス濃度測定器が再度急上昇した。彼は、今度は間違いなくもっと大きな地震が来ると判断し、夜は家族(妻と5人の子供)共々外のテントに避難したから、その夜(6日午前3時32分)発生したmag.6.3の本震の被害を免れた。INGVにラドンガス濃度異常の公表を禁じられていたため、彼の地震予知をきいた者は自身の親しい友人・知り合いだけ、彼を信じた多くの友人は忠告に従い野外テントに避難して無事だったが、彼の地震予知を聞く機会を与えられなかったL'Aquilaの一般住民は犠牲者となった。

全体を見ると預言者ほどの正確な地震予知ではないかもしれないが、Giuliani氏が予知できた大地震の危険性を市民に知らせる機会を奪い、逆に安全宣言を出して多数の住民の大惨事を招いたDr. Boschiら著名科学者の行為は、間違った情報を流布した過失により多数の死傷者を発生させた「過失致死罪」に当るとして、今週、検察側は7人全員に禁錮4年を求刑した。判決は来月10月23日までに言い渡される。