アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

Freeze! を理解しない者は射殺してもよい?

米国は建国以来、拳銃等の銃器で身を守る伝統が根づいており、既に国内に2億丁以上の銃器が出回っていると言われ、銃器を使用した殺人事件の被害者は毎日30人以上発生している。今日のニュースでもMilwalkee郊外のエステサロンで男が銃を乱射し、3人が死亡、4人が負傷と報じられている(犯人は自殺)。2007年のVirginia工科大学銃乱射事件では死者32人(教員学生合計)、負傷者23人が発生している(犯人の学生は自殺)。こうした銃の乱射事件の被害者数は毎年年間1万人を超える。2010年統計では米国11,127人に対し、独381人、仏225人、英68人、日39人と、銃社会の米国における被害者は圧倒的に多い。米国における銃の位置付けは護身、自己防衛だ。銃がほぼ自由に入手できる国だから誰が銃を持っているかわからない。自分の身は自分で守る必要があるから銃が必要なのだと。銃を持たぬ者は裸で猛獣に対峙するようなものだという。少数の銃規制推進派に対して大多数のアメリカ人は「あなたが強盗するとしたら、銃で武装している家と銃を置いていない家、どちらを標的に選ぶか」ときくのだそうだ。ならば拳銃を所持するのはアメリカ人の権利かもしれないが、同時に自分が誰かに撃たれるリスクを背負っていることも事実だ。

20年前僕のAFSの後輩がLouisiana州Baton Rouge市の高校に留学中事件に遭った。1992年8月後半日本を出て、事件に遭ったのは10月17日、服部ヨシヒロ(剛丈)君は host brother とHalloween パーティに出かけたところパーティ会場の家をRodney Peairsの家と間違え呼び鈴を鳴らした。強盗と思ったというPeairsは銃を構えて仮装した留学生に向かって「フリーズ(Freeze「動くな」)」と言った。留学生は「プリーズ(Please)」と理解したのか「We're here for the party.(パーティに来ました)」と言ったとたん、この男に胸を撃たれた。ライオンも一発で仕留める威力のある銃(マグナム44口径)で撃たれた服部君は、即死だった。銃弾が胸を貫通していたという。Peairs容疑者は、傷害致死罪(殺人罪、最高懲役40年)で起訴されたが、裁判(陪審制度、日本の裁判員制度類似)では「玄関のベルが鳴ったなら誰に対してでも、銃を手にドアを開けることが出来る法的権利がある。」と正当防衛を主張、無罪を勝ち取った。

しかし、その後の民事裁判では一般人の陪審裁判ではなく法律専門職の判事裁判となり、留学生の様子に身の危険を感じたと言うPeairs被告の主張は退けられ、武器を持たず屋内にも侵入していない者に対して致命的銃弾を撃つのは分別のある人間ではないとして正当防衛が否定され、1994年、損害賠償金65.3万ドル(当時の価値で約7,000万円)の判決が出た。その後高等裁判所はPeairsの控訴を棄却したため一審判決が確定した。(分別のある人間は空に向けて警告射撃をするか脚を狙うのだそうだ) 民事裁判の過程でRodney Peairsが家に何丁も銃を持つガンマニアであること、頻繁に近所の野良犬や自宅敷地内に入ってきた犬猫を射殺していたこと、しかも当日は酒を飲んでいたことなどが実証されたため、全面敗訴に追いやられたようだ。判決を受けてPeairsは自己破産したので賠償金は一切支払っていない。服部君の遺族にはPeairsの保険から直接10万ドルだけが支払われたが、服部夫妻はこの原資を基にYoshi’s Gift賞基金を作り、米国における銃規制運動に貢献した団体を毎年表彰している。その他服部夫妻は息子の障害保険1,000万円を基にYoshi基金という奨学金制度を作って1994年から毎年米国よりAFS留学生を日本に招待している。昨2011年はこの奨学金で19人目の高校生が我がAFS大阪南支部(大谷高校)に来た。現在日本に来ているのは20人目の奨学生だ。米国の高校生が銃のない日本の安全な生活を1年間体験して、本国に戻ってから米国の銃社会を変えてほしいという願いから始めた。銃器による被害者を一人でも減らすために。

*Pennsylvania州西部の町で10月20日夜10時頃、仮装して親族の主催するHalloweenパーティーに参加していた8才の少女が、いとこの男性に散弾銃で首、背中、腕を撃たれ、現在集中治療室で生死の境をさまよっている。少女は黒い服に白い羽根のついた黒い帽子を着けてパーティーに参加していた。屋外を参加者20~30人が行き交うなか、少女が丘に隠れていたところ、その姿を遠くから見た主催者の女性(Janet Grant, 少女の叔母)がスカンクだと思い息子(Thomas Grant)にスカンクを撃つよう伝え、Thomas(少女のいとこ)が発砲したもの。銃が氾濫している米国では銃による故意の殺人だけでなく過失による被害者も連日ニュースになっている。