アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

欧州におけるジプシー解放の日は来るか?

ジプシー(Gypsy)は差別用語になるので最近はロマ(Roma)と表現するようだが、赤ちゃんを抱いたジプシーの女性が物乞いをする風景はイタリア・南フランス・スペインいたるところでみられる光景だ。数人の子供だけで旅行者に近寄って来て、いつの間にか財布・カバン等を持ち去られたという被害に遭う日本人もたくさんいる。彼らはまともな職に就けないから、生きるためにやむを得ずこのような生活をしているのだそうだ。元々はインド辺りから1,000年~1,500年ほど前にヨーロッパに移動してきたロマ民族であり、ヨーロッパ人にとってみれば勝手に来た不法侵入者だ。空き地にテントを張り集団で暮らしているが住民登録などなく、学齢期の子供でも学校に入れない。大人は店を持つことも許されず、不動産を所有することもできない。路上で商いをするとか、スペインでフラメンコを職業にするなどわずかな合法的活動は許されているが、多くのジプシーは、生きるためには乞食をするか泥棒をするしかない。ヨーロッパ各国はジプシーと自国民との婚姻を禁止しているので、その国に同化することもない。

ジプシーの比較的多い国はルーマニアブルガリア・スペイン・フランス・トルコ・ギリシャハンガリーなど(それぞれ70万人~40万人前後か)といわれるが、ほぼ全欧州に散らばっている。第二次世界大戦の頃までは奴隷として使われていた者が圧倒的に多かった。第二次世界大戦の間にナチスが殺害したジプシーは50万~150万人と言われるが、どの国でも人口に反映されていないから、正確な犠牲者の数は誰にも分からない。今現在も統計がないので欧州にどれだけのジプシーがいるのか不明だ。有力な推計によれば1,000万~1,200万人といわれるが、400万人説も1,400万人説もある。

出自はともかく、彼らは人間であることに疑いはない。ならばそろそろ基本的人権を認めて欧州の正式な構成員としなければ民主主義の名が廃るというものだ。米国も黒人奴隷を解放して基本的人権を認めたから今の大統領がいる。欧州のジプシーは一部米国にも渡り、移民の米国ではジプシーはいち早く基本的人権を認められたから、その子孫から大統領も誕生した(Bill Clintonの高祖父は1860年死亡したロマ民族指導者Andrew Brides)。パスポートもなくヨーロッパの国境を通過できる人間はジプシーだけだ。どの国も自国に残ってほしくないから旅券のないジプシーを出国させる。隣は別の国だから入国を認めなければ国境沿いに広大なキャンプができる。それも困るので「3日以内に自国から出国せよ」と条件を付けて入国を許可する。元々入国日を記載する旅券も持たないから何年滞在したか管理もできない。たとえ管理できたところでインドに強制送還すべきなのかどこに強制送還を受け入れる国があるのか分からない。

2009年・2010年にフランス大統領Nicolas Sarkozyは国内のジプシーキャンプの一部を強制撤去し、約2万人をルーマニアブルガリアに強制送還した際、ジプシーとフランス警察の間で大騒動があったが、ルーマニアブルガリアもフランスの人権侵害に対して激しく非難した。EU人権委員会ルクセンブルクなどジプシーのほとんどいない国が委員長を務めており、ジプシーに基本的人権を認めないのは不名誉なことだとフランス等を非難している。ジプシー差別問題は欧州の恥部であり、いつの日かジプシーの開放が実現するまで、中国など他国の人権侵害を非難する権利はないと言わざるを得ない。