アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

アリタリア航空に預けた荷物の行方

日本でゴールデンウィークの真っ最中、イタリアでは旅客機の貨物室から乗客の預け入れ荷物窃盗団がとりあえず86名逮捕されたと報道があった。ここ2-3年乗客から荷物の中の貴重品(貴金属、現金、携帯電話、ディジタルカメラなど)がなくなったとの報告が多く、航空会社も頭を悩ましていたそうだ。カバンが壊されているものについては空港でも事故の処理をしてくれるが、壊されていないカバンから一部の貴重品が盗まれている場合は、家に帰るまで普通は気づかないものだ。一部の乗客はどこかで忘れてきたものと諦め、諦めきれない残りの上客は気が付いてから空港に文句を言うのだが、物がなくなったのは空港のせいだと断定する証拠がない。

それでもあまりにも多くの苦情が寄せられるので、イタリア警察は400人規模の貨物特別捜査班を編成して、荷物の預け入れから荷渡しまでの全工程で特殊なカメラを設置、捜査していたところ、なんと機内の貨物室に仕掛けた隠しカメラに、アリタリア航空の正社員19名を含む86名の泥棒が映っていたのだそうだ。ビデオに写っていた「荷物係」たちは手際よくカバンの中から価値のありそうなものを取り出し、ポケットに入れる。鍵の掛かっているスーツケースは強引に鍵を壊してこじ開けたり、カバンをたたきつけて壊したりする姿もばっちり監視カメラに映っている。以前から預けた荷物の一部が盗られるのはヨーロッパの空港では常識で、1980-1990年代はイタリア(ローマ、ミラノなど)だけでなくロンドンの空港経由もよくなくなると知られていたが、ごく一部の犯人が人知れずやっていた頃は、警察も相手にせず、ここ数年、あまりにも苦情が多すぎて、やっとイタリアの警察も動き出したそうだ。

昔からイタリアの失業率は20-30%と危機的水準にもかかわらず、餓死する者がほとんどいないのは、他人のものを適当にもらって食べているからと言われてきた。立派な服装で日曜礼拝に行ける人は、神様の応分の祝福があるのだから、恵まれない人に賽銭をあげるのは、恵まれた人に課された義務でもある。恵まれない人は、自分は恵まれた人たちから施しを受ける権利があると考える。裕福な人が飛行機に乗って旅行するのだから、自分のような恵まれない者は、その預け入れ荷物の一部をいただくくらい大した罪にならないと考えるに違いない。

僕もその昔チェックインしたカバンを明らかに故意にナイフで切られたり中身を盗られたりしたことがあったが、空港側に責任を認めさせるのに苦労した記憶がある。切られていないカバンを預けたことを証明するのが難しいし、中身がなくなっているならあなたの保険会社と話しなさいと相手にしてもらえない。荷物を預かった方は、途中で事故が起こるはずがないと主張する。これで長年の謎がようやく解けた。飛行機の貨物室ですべての不可解な作業が行われていたのだった。