アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

公安も税務署も頭を柔軟に

先月末、風俗営業の許可を取らずにクラブで客にダンスをさせていたとして、大阪市の老舗クラブ「NOON」の経営者が、懲役6カ月・罰金100万円を求刑されていた裁判の判決が出た。確かに風俗営業許可を取らずに客にダンスをさせていたが、大阪地裁は(平26.4.25)無罪とした。今やダンスは中学校の必修科目として教えられる時代、ダンスが少年少女の健全な育成に障害を及ぼす行為であるならば、公安委員会は先に教育委員会を訴えるべきだった。
 
風俗営業法は、性風俗の秩序を乱すものを規制する法律だが、ダンスホールでダンスをさせる行為、ナイトクラブでダンスと飲食をさせる行為が、直接、性風俗の秩序を乱す行為と一律にみなすとは、なんと頑固おやじの発想だろう。風営法の制定された1948年頃は、確かにダンスは男女間の享楽的な雰囲気を冗長し、性道徳と社会の善良の風俗に悪影響を及ぼす可能性が高かったかもしれないが、時代が代わったことに気がつかない官僚がいたのには驚いた。判決では「当時、客同士が体を触れておらず、演出上も性風俗の秩序を乱すような営業は証拠上認められない」として、経営者に無罪を言い渡した。

昨年、馬券王(元会社員、40才)が3年間で、28.7億円を馬券に投資し、30.1億円の払戻金を得た場合の「所得」はいくらかでもめた裁判で、大阪地判平25.5.23は、所得を1.4億円と判定したが、税務署は納得せず、控訴した(1.4億円の雑所得に対する課税額は約5,200万円)。税務署の言い分は、外れ馬券に投資した金額(27.6億円)は経費ではなく、彼が勝手に遊びに使った金とでもいうのだろう。当り馬券だけの投資額(=仕入原価)は1.1億円であったから、馬券王の一時所得は29億円となり、6.9億円の税金(無申告加算税を含む)を払うべきと主張する。
 
阪高裁(26.5.9)は、先週、一審の大阪地裁判決を支持し、外れ馬券を含む馬券の全購入費が、所得から控除できる必要経費であると認めた。税務署官僚の論理は、一審も二審も敗れたことになる。28.7億円を投資して、30.1億円の配当を得た人の収入が29億円と計算する方が非現実的だ。競馬は博打であり、公務員ほどきれいな職業ではないだろうが、合法的に収入を得る行為を偶発的な(一時)所得とみなさなくてもよかろう。
 
先月、札幌国税局が、北海道在住の男性公務員(41才)の競馬の外れ馬券の購入費を経費として認めず、6年間の実際の利益約57,000万円を上回る、約98,000万円と推計され、追徴税額は彼の実際の利益を超えるという記事があった。税務官僚の前では、いくら競馬で稼いでも儲からないということか。もっと頭を柔軟にしてほしいものだ。