今月初め、埼玉県・狭山市で身元不明のまま18年間、特別養護老人ホームで保護されていた認知症の男性が、行方不明になっていた東京の野村正吉さん(82)と判明したというニュースがあった。彼は、1996年10月、狭山市内の路上で倒れているところを保護された。自分の名は「ノムラ・ショウキチ」と名乗っていたが、埼玉県内にそのような名前の行方不明者はおらず、身元が特定できないままほぼ18年が過ぎたようだ。東京と埼玉県で行方不明者のリストが共有されていなかったとはあきれるばかりだ。全国で行方不明者のリストをオンラインでつなぐ作業は始まったばかりというから、行政の対応は営利企業のような真剣さに欠ける。
5月には7年ぶりに身元が判明した女性のニュースがあった。2007年10月30日深夜、群馬県館林市にある東武鉄道館林駅の近くの路上で、交番に保護されたこの女性は、認知症によって名前や住所が言えなかったため、館林市は「行旅病人」として市内の介護施設に入れた。本人の靴下にはカタカナで「ヤナギダ」、下着には「ミエコ」と書かれていたが、本人は「クミコ」と名乗ったため、館林市は手続きの必要から「柳田久美子」という仮の名前をつけ、生年月日も外見から推測して昭和20年1月1日として住民票を作ったという。
実際は、彼女が群馬県で保護された前日の2007年10月29日夕刻、東京・浅草に住んでいた彼女がデイサービスから帰宅し、近くに住む親族を訪ねに出たのを最後に行方が分からなくなり、同居の夫と母親は、警察に届け出、警察は彼女の顔写真を載せた公開手配のチラシを数万枚作成し、群馬県を含む関東6県の交番などに貼りだしたというが、7年間何の有力な情報も得られなかった。もちろん家族もポスターを作って、地域で情報提供を呼びかけたが、手がかりはなし。
偶然が重なって、この女性が、7年前、東京・浅草で行方不明になった柳田三重子さん(現在67才)と判明、7年ぶりに妻との再会を果たした5月12日は、2人の41回目の結婚記念日だったというから、神様が取り持ってくれた不思議の再会としか考えられない。実は、この前日にNHKスペシャルでで放送されたことがきっかけで判明したのだという。