アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

脱税の季節にまともな最高裁判決予想

確定申告の時期になった。原則として税務署は性善説に立ち、電子申告を薦める。人件費をかけてわずかな不正を指摘しても経済的に見合わないためか、添付書類を提出せず、申告された数字を原則として信じてくれる。これは、世の中に、悪人が多いと成り立たない制度だ。でも、悪人でも善人とみなしてくれるほど税務署は甘くない。それなりの情報を得ていて、彼らが掴んでいる数字とかけ離れた申告をする者に対しては、徹底的な税務調査がなされる。
 
 今月摘発された工業用接着剤メーカー「スリーボンド」の元会長(67才)は、東京国税局の税務調査で、2013年までの5年間で所得計約二十数億円の申告漏れを指摘された。本人は海外居住を理由に日本で税務申告していなかったが、実際は日本に1年の半分以上滞在していたことが判明、

生活の本拠は日本にあると認定され、所得税の追徴税額は約5億円となった。国税局は、この元会長の知人女性が2013年に3億円弱で購入した都内のマンションの部屋や所有する2億円相当の宝飾品についても、資金は元会長が贈与したと判断し、女性に贈与税2億円の申告漏れを指摘した。女性は贈与税を払うために、また元会長から2億円ほどを贈与してもらう必要が出てくるが、これにも贈与税がかかるだろう。何度か繰り返して、税額が110万円ほどになったところで非課税枠に収まり、これ以上追及されなくなる。

トステム(現LIXIL)創業者の長女は、昨年12月、国税局の税務調査で、親の遺産の評価額が不適正として、百数十億円の申告漏れを指摘され、相続税の追徴税額は、60億円超に上った。相続税節税のため、この創業者は生前、自己の所有する自社株(当時の時価200億円)を売却して金融資産を購入、これを一族の資産管理会社に現物出資していた。非上場会社株の評価額は、国税庁の通達に基づき、事業の種類が似た複数の上場会社の株価を基に評価するが、この場合は、税負担軽減を目的とした、著しく不適当な行為と判断され、株式が約2倍に再評価されたのだ。
 
国税局の徴税活動が度を過ぎると「はずれ馬券経費訴訟」に発展する。大阪の馬券王(元会社員、41才)が3年間で、28.7億円を馬券に投資し、30.1億円の払戻金を得た場合の「所得」はいくらかでもめた裁判で、大阪地判平25.5.23は、所得を1.4億円(この雑所得に対する課税額は約5,200万円)と判断したが、税務署は納得せず、阪高26.5.9でも負けたので最高裁に上告していた。税務署の言い分は、外れ馬券に投資した金額(27.6億円)は経費ではなく、彼の経費は当り馬券の投資額(1.1億円)だけであったから、一時所得額は29億円となり、6.9億円の所得税無申告加算税を含む)を払えというものだった。310日に出ることが決まった最高裁判決は、一二審を追認し、馬券王の経費を28.7億円の全投資額と認めることで決定した。庶民感覚からしても、この国税局の主張は、世間知らずの「井の中の蛙」の発想だった。