ロシアのプーチンを批判していた野党指導者Boris Nemtsov氏（55才、Boris Yeltsin元大統領当時の第一副首相）が昨日クレムリン宮殿そばの橋の上で何者かに射殺された。ウクライナ人女性と二人で歩いていたNemtsov氏を近付いてきた車から銃撃、背中に４発撃ちこんで車は立ち去ったという。不思議なことに女性は一切けがなどしておらず、この女性が事件とどんな関わりがあるのか、まだ明らかになっていない。
Nemtsov氏はプーチン批判の急先鋒、プーチンの大々的汚職を公然と批判し、明日日曜日はプーチンのウクライナ軍事介入反対を訴える大規模デモを計画していたから、このタイミングで死んでくれることは、プーチンにとって理想的な事態である。誰が見てもプーチンが仕組んだ暗殺であると考えるのが自然だ。
プーチンは、元KGB（ソ連国家保安委員会）、FSB（ロシア連邦保安庁）で、政権にとり邪魔な人物の暗殺を指示していた張本人だから、今回の事件が起こって、「真相を究明する。亡くなられたNemtsov氏のご家族に哀悼の意を表する」と発表したが、白々しいウソであること甚だしい。
元KGB・FSBでプーチンの部下だったAlexander Litvinenko氏（1962-2006）が、実業家Boris Berezovskii氏の暗殺（contract killing = 契約殺人）を口頭で指示されたが、命令を拒否したため、他の理由で有罪にされ、結局彼は英国に亡命したが、当時のFSB長官はプーチンだった。ロシア反体制活動家として英国で活躍していたLitvinenko氏は、2006年プーチンの回し者に毒殺された。英国は毒殺犯を元KGB職員Andrey Lugovoyと断定、殺人罪で告発したが、プーチンはロシア市民の身柄引き渡しに応じず、ロシア政府も毒殺事件に関与していないと公表している。
Litvinenko氏毒殺の1月前には、著名なプーチン批判のロシア人女性ジャーナリストAnna Politkovskaya氏（当時48才）が、モスクワ市内の自宅アパート建物エレベーター内で、射殺体で発見されている。事件から5年後、ロシア警察は実行犯2人と協力者3人を拘束、当時モスクワ警察第4捜査課長だった男（逮捕時は警視）が事件を指揮したとして逮捕したが、この指揮官に多額の現金を渡して消音器付きの拳銃を手配させた黒幕が誰かは、未だに明らかにされていない。新興財閥を自分の配下において、自由自在にほぼ無制限に金を使えるプーチンが後ろで操っていることは、火を見るより明らかだ。プーチンはいつまでも金で人を動かし、自分の政敵・批判者をこの世から抹殺して、ロシアに君臨し続けることを目論んでいる最低の男だ。
