IMFからの借金(€17億≒2,200億円)返済期限が明日6月30日であることは、ずっと前からわかっていた。わかっていたはずだが、ECB(欧州中銀)から借りてIMFに返済するつもりだったから、たちが悪い。借金は返すものであり、踏み倒すものではない。身の丈に応じた生活をしていれば、EUも金融支援を続けてくれただろうが、生活の質は落としたくない、税金はあげたくないと、有権者の希望をすべて受け入れる現首相チプラス青年(Alexis Tsiprahs、急進左派連合、40才)は、自ら墓穴を掘ったに等しい。
EUに金融支援を延長させようとかけた圧力が、ロシアのプーチンとの蜜月演出だ。今月19日、この青年はロシアに行き、プーチンと「トルコストリーム」と呼ばれる、ロシアからトルコ・ギリシャを経由してヨーロッパにいたる、天然ガス・パイプラインの敷設に調印した。ロシアとギリシャは、経済協力を強化することで合意したと両首脳は発表した。EUがそろってロシアに経済制裁を課している真っ最中に、真逆の対応を取れば、EUの協力が得られなくなることは、馬鹿でもわかる。でもこの青年はそれがわからないのか、わかる余裕がないのだろう。借金の返済が今月末に迫っているから。
ギリシャのやろうとしていることは、他人のお金で優雅に暮らそうということだ。もともとユーロに入ったのもでたらめな経済指標をEU側に提示して、うまく通ったからだ。それが2009年の政権交代で明るみに出た。EUやIMFから借りた借金(救済資金)は€2,400億(≒32兆円)、この国のGDPが€1,790億(約24兆円)だから、GDPの1.4倍を借りたことになる。当然、最初から返済の意思がなかったと思われるし、貸す方だって、返済能力がないとわかって貸したはずだ、と居直っているだろう。
ギリシャは公務員天国だ。人口の10%が公務員。全労働人口の25%が公務員だ。縁故主義、政治家の口利きなどで公務員の数を増やし、その公務員の給料は、民間企業従業員の二倍ほど、公務員の年金は現役時代の73-90%とEUの最高水準。これを減らせば追加救済資金を提供するとEUがギリシャに提案しても、チプラス青年は拒否する。借金を返済すべき立場の者に拒否する権利も自由もないと思うが、そこがこの青年の限界だ。EUはチプラスを交渉相手にしないと決め、IMFの借金返済の資金は貸さないと決定した。残る道は、個人なら自己破産、国の場合は、債務不履行で、ユーロ圏を追い出される。