ドイツ・Volkswagen(VW、日本語で「民衆車」)が、アメリカのディーゼル排ガス規制基準に達していないにもかかわらず、不正なソフトを使って試験を合格したように見せかけ、過去8年間で48.2万台もの違法ディーゼルエンジン車を売っていたことがばれてしまった。世界でも特に厳しい排ガス規制を敷いている米国で、これほど長年にわたって米規制当局(環境保護局=EPA)をだまし続けることができたというのも、さすが技術大国ドイツのなせる業ともいえるが、このリコールの代償は、とてつもなく大きい。対象車は全世界で1,100万台という。
先にタカタのエアバッグの不具合でリコール数千万台と言われたが、損害額はVWの金額とは比べ物にならない。第一、問題のないエアバッグは現に存在するから、取り換えることができるのに対して、VWのディーゼルエンジン車は、実際排ガス規制に合格できる水準ではないから、ディーゼルでない自動車に交換しなければならない。これは全損というもので、エアバッグを交換する程度の費用で済まない。しかも、米国は違法ディーゼルエンジン車1台につき、$37,500(約450万円)の制裁金(罰金)を科すから、米国で発生する制裁金だけで2.2兆円に上る。米国以外で売られた1,050万台の違法ディーゼルエンジン車に対する制裁金・罰金がいかほどになるかは、全く予想がつかない。(米国と同じ制裁金がかかるならVWには49兆円の負担となる)
違法ソフト(無効装置)で排ガス規制を逃れていたディーゼルエンジン車は、この違法ソフトを装置しない状態で検査すると、NOx等の有害物質が規制値の10-40倍ほど排出するというから、明らかに、人の健康に害を及ぼすことを承知の上で犯した犯罪であるとみなされる。これは刑事訴追の可能性が高い。しかもアメリカが得意な集団訴訟が待っている。単にばれたからと言ってVW CEOのMartin Winterkorn(68才)一人が辞任して済む問題ではない。