アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

大英帝国の終わり

 英国の総選挙でEU離脱方針の保守党が過半数を占め、来月末のEU離脱が実質的に決定した。こうなったら、離脱は実現するのだろう。離脱推進派は英国の主権を取り戻し、EUの「属国」に成り下がるのは御免だと主張する。人口5億人の「大国」の一部が「脱藩」して独立独歩の生き方をすると宣言するようなものだ。英国は人口が欧州では多く、「大国」だったが、将来、北IrelandとScotland(両地域の人口合計710万)が英国から離れたら、英国の人口は約5,900万となり、イタリア(6,050万)より小国になる。将来の英国には独仏伊という大国3か国を含む27か国が束になったEUが立ちはだかり、従来仲間だった英国がよそ者になる。

 

 いかにも歴史を逆転させるような決断だ。世界大戦の悲劇から第三次世界大戦を回避するための方策がEU設立だったのに、過去の栄光にしがみつく旧世代の発想で、移民増加により自分たちの生活が脅かされていると感じている一部の者の意見を誇張して主張したため、このような結果になった。EUから離脱した国が今までにないから、先がどうなるか分からない。政敵・元首相Cameron(Oxford大学時代の友人で当時労働党党首)がいる限り自分に出番はないとひねくれていたJohnson(当時London市長)が考えたのが、奇想天外な発想だったEU離脱だ。それまでJohnsonもEUの中で活動するのが最善だと主張してきたが、長期政権間違いなしと言われていたCameronを失脚させるため、EU離脱に主張を変えた。同世代のため、Cameronが退陣する頃にはJohnsonも同じ年齢なのでJohnsonの出番はなくなる。

 

 Trumpと同じく、嘘八百の明るい未来を国民に提示し、急増する移民を抑制すべきと考えていた国民が中心に、EU離脱が自分たちの生活をよくしてくれると飛びついたのが、国民投票でかろうじて過半数になったEU離脱派だ。ロシアのクリミア半島略奪に抗議して、EUはロシアに対する経済制裁を実施していた(現在も継続中)ため、ロシアにとってEUが英国とEUに分断されるのは好都合、ロシアも何とか国民投票EU離脱派が勝つよう、ネット工作専門業者がインターネット操作で離脱派を応援したから、このような結果になった。ロシアにとっては、分離後の英国が、EUほど強い経済制裁を課さないよう祈るだけだろう。

 

 EU残留派の国民は、実際は過半数という数字もあるが、日本と同じ代表民主制なので、国民は国会議員を選ぶことしかできず、野党の労働党がしっかりしなくてまとまらないから、保守党が過半数議席を確保したのが実態だ。野心家Johnsonの勝利だが、英国にとっては敗北だと思う。安倍政権も長期政権となり森友・加計学園桜を見る会など不正追及をうまくかわして勝利したと思っているかもしれないが、日本という国家にとっては、このような指導者がのさばっているのは、国家を衰退に導く。野党又は自民党内の対抗馬がしっかりしなければ、Johnsonが英国を乗っ取ったような国になる。民主主義国の国民の判断なんてあてにならないと最初から割り切っているのが、中国の指導者習近平だ。習近平が神様のような人物なら下手な民主主義より独裁の方がいいだろうが、残念ながら地上にそのような独裁者はいまだかつて存在したことはなく、今後も出てこないだろうから、不完全ながら英国式民主主義が、国民の選べる最良の統治形態なのかもしれない。