アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

世界最大最悪の三峡ダム

 6月初めから50日に渡って降り続けている雨により、中国中南部を流れる最大・最長の河川・揚子江(長江)が氾濫して、既に3,800万人もの被災者が出ている。死者も140人ほどと報告されているから、九州豪雨よりけた違いに大規模だ。氾濫した河川は433、大半は揚子江の支流とのこと。その揚子江中流に建設された世界最大の三峡ダムが危険水域を超え、大量の雨水の圧力で間もなく決壊するのではないかと心配されている。河口には上海市(人口2,428万)があり、流域に宜昌市(人口414万)、武漢市(人口1120万)、九江市(人口492万)、南京市(人口851万)など大都市もあって、その際の被災者は4億~6億人とみられている。もちろん、揚子江流域は穀倉地帯でもあり、中国の穀倉地帯が水没すれば食糧危機も発生する。

 

 長さ2.3km、貯水容量393億トン(琵琶湖の水量275億トンの1.43倍)の三峡ダムは、世界最大規模の水力発電量を誇る。1994年着工から15年かけて2009年に完工した。総工費1,800億元(約2.7兆円)。このダム1個で日本のすべてのダムの貯水容量に匹敵するというから、その規模が想像できる。巨大ダムを造るとなると必ず被害者が出てくるが、この場合は約100万人ほどの住居を埋没させたというから、民主主義国でこの数の合意を得ることはまず不可能だ。独裁中国共産党の命令により、立ち退きを強制できたからこそ実現した、世界最大のダムプロジェクトといえる。

 

 実は毛沢東が中国を掌握する以前から三峡ダムのプロジェクトはあったらしい。皮肉にも洪水防止のためのダムであり、同時に発電、河川運輸にも寄与するというものであった。1992年の全人代(日本の国会に相当)で決定した議案だ。通常は反対票を投じる者はなく、すべての議案は賛成票100%で議決されるところ、三峡ダム議案の場合、賛成票は67%(1,767票)、反対(177票)及び棄権等(689票)が33%もあった。当時の中国共産党執行部は江沢民李鵬。親分の提案議案に反対する者は干されるから、中国共産党執行部の後継者胡錦涛温家宝も賛成票を投じたはずだが、皮肉にも胡錦涛清華大学水利学部「河川中核発電所専攻」のダム発電専門家であり、温家宝は北京地質学院の修士課程を卒業した地質の専門家だ。専門家としては問題のあるプロジェクトであるとして反対だったはずで、それが証拠に、現役時代、彼らは一度も世界最大の三峡ダムを視察に行くことはなかった。

 

 しかし、中国にも優れたエンジニアはいるもので、人生をかけて三峡ダム建設反対を訴えた専門家は多い。その理由は、揚子江下流の堤防が崩壊する、汚泥の堆積問題、水質悪化、気候の異常変動、地震の頻発、生態の悪化、上流における水害の深刻化、地滑り・山崩れ・土砂崩れの発生など、すべて建設強行された三峡ダムが現実に引起した問題ばかりだ。中国には現在9.8万基のダムがあるが、8.2万基(84%)は欠陥があって危険と国務院も認めている。この中に当然、三峡ダムも含まれており、位置のずれ、漏れ出し、変形などの発生が確認されている。あと1週間ほど降雨が続けば、三峡ダム決壊は現実の問題になるという。もし、そうなった場合は、中国共産党の独裁政治が終わりを迎えることになるだろう。