アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

ミャンマーは第二のシリアになるのか

 ミャンマーでクーデタが発生してから2か月になるが、情勢は最悪に向かいつつある。アウン・サン・スーチー(Aun San Suu Kyi)国家顧問を蹴落として権力を握ったのは、国軍トップ(最高司令官)のミン・アウン・フライン。2017年8月、日本財団の招待で来日し、時の首相安倍晋三を表敬訪問した男だ(当時の肩書は軍司令官)。この国では、長い間、軍事政権が続いていたが、5年前ようやく選挙に基づく民主政権が発足、それを機に外国との交流も正常化してきていたのに、また軍が政権を奪取してしまった。クーデタに反発する市民のデモに対し軍部・警察は容赦なく発砲し、既に500人以上の犠牲者を出している。これは10年前のシリアを思い出させる。

 

 民主化を求める市民のデモにアサド政権は銃口を向け、この10年で40~50万人が死亡、500~800万人の難民を生んだ。自国民にクラスター爆弾化学兵器などを使い、極悪非道の限りを尽くして、オバマ大統領からも最後通牒を突き付けられながら、ロシア・イラン・中国などを味方につけて国際社会の一致した非難をはねのけ、いまだに自分たちだけ生き延びている。イラクの人口の3分の1は難民になったとの情報もある。民主化を求める国民の力とはこんなに弱いものかと知らされる。ロシア・イラン・中国などのならず者国家がなければ、国連が主体になってアサド政権を倒すことだってできたはずだが、今の国連の制度では、国連主体の軍事行動は起こしにくい。

 

 ミャンマー国軍の残忍な暴力行為についても国際社会はまとまらない。中国は今回のクーデタを内閣改造程度に理解し、もともとアウン・サン・スーチー氏の民主政権を厄介者と思っていた節があって、日米欧等と仲良く付き合うのを快く思っていなかったから、このクーデタを機にミャンマーが中国になびいてくれればちょうどいいと思っていたのだろう。それに、習近平にとって、国民に銃口を向けて自由をはく奪するのは、日常茶飯事で、人権侵害とも何とも思っていないから、ミャンマー国民が気の毒なんて感情はゼロだ。

 

 米英欧(EU)は、早速、ミャンマーの軍事政権の資金源を断つべく、先週、軍最高司令官など11人の個人資産を凍結、渡航禁止にし、更にミャンマー国軍系企業2社を制裁対象に指定した。MEHL (Myanmar Economic Holdings Ltd.)とMEC(Myanmar Economic Corp.)の2社だ。この2社は銀行やホテル、製鉄など幅広い企業を傘下に持ち、国内経済に強い影響力を持つ。株式は国防省のほか、クーデタの首謀者ミン・アウン・フラインら国軍の現役、退役幹部らが個人で保有している。彼らとこの2社が米英欧に保有する資産は凍結され、国軍の経済的利益をはく奪することにより、国軍による残忍な市民弾圧のための資金源を枯渇させるのが狙いだ。

 

 例によって中国が今回のクーデタの首謀者とつるんでいるとの情報もあり、中国はミャンマーの軍部を擁護していて、国連安保理で一致した制裁は課すことができない。ミャンマー最大の経済援助国は日本だが、日本政府も「お気の毒」という感じだけで、軍最高司令官に強く圧力をかけるようなことはしていない。そうこうしているうちに、毎日、何十人ものクーデタ反対を叫んでデモをしている市民が殺されている。日本政府はもっと強く軍部に抗議すべきだ。