アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

電磁波の正体はコオロギの鳴き声

 2015年7月、Obama大統領が54年ぶりにキューバと国交回復を発表し、米国の外交官がHavana大使館に駐在することになった。同時にキューバの外交官も米国の大使館に派遣された。翌2016年には、Havana大使館の米外交官らが、原因不明の体調不良を訴えた。頭痛やめまい、耳鳴り、集中力の低下などの症状から、米政府は、マイクロ波(高周波エネルギー)兵器が使われた可能性を有力視していた。マイクロ波又は超音波による攻撃説は、一部の外交官やその家族などの脳の一部が損傷するなど、深刻な健康被害を被ったことにもより、当時の大統領Trumpは科学的根拠は示さず、「キューバの攻撃のようだ」と発表した。この怪現象は「Havana症候群」と名付けられ恐れられた。

 

 米国は、キューバに滞在していた外交官やその家族の多くを退避させ、大使館は再び閉鎖され、同時に、駐米キューバ外交官15人を報復として、Washingtonから追放した。同時期にCanada大使館員もHavana症候群にかかったとの報告もあった。冷戦時代、当時のソ連(現ロシア)はmicro波を使った兵器を開発していたので、ロシアによる攻撃説も登場した。その他、音響兵器が使われたという説や、蚊の殺虫剤が原因だとする説なども、現れたが、どれも、科学的根拠は一切見つからなかった。

 

 しかし、被害を受けた外交官等の中には深刻な症状の被害者もあり、健康被害に対処するため、Biden大統領はHavana症候群を「異常な健康事例(anomalous health incidents)」と呼び、2021年10月8日には、被害者が追加医療を受けられるよう、経済的支援をする「Havana法」を成立させた。ところが、この怪現象を調査研究してきた米国の独立科学諮問機関JASON(一流の科学者約60人で構成される)が発表した最新の報告書によれば、Havana症候群の原因は、なんとコオロギの鳴き声が原因だという。このコオロギ(crikets)の学名はAnurogryllis celerinictusといい、非常に特徴的な高い鳴き声を出すのだそうだ。

 

 日本人ならば、夏のセミの鳴き声に慣れ親しんでいるので、同じ環境で住んでいても、恐らくHavana症候群になることはないと思われるが、米国の外交官は、半世紀ぶりにHavana大使館に赴任するにあたり、キューバの諜報員は外交官に嫌がらせをするとか、24時間体制で監視するなどと事前に忠告を受けていたので、高度なストレスから、猜疑心が強くなり、心因性による集団心理の影響を受けやすい状況にあったと分析される。それにしても、たかがコオロギの甲高い鳴き声によって、国家同士が外交官を召喚し、追放するなど、わかってみれば極めてばかばかしい対応をしたものだ。お化けが出ると心配する人にお化けが出て、神がおられると信じる人に神が現れるのと似たような心理から、コオロギによる健康被害を受ける外交官がいるのだろう。