アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

認知症治療薬遂に登場

 認知症の原因の半分を占めるAlzheimer(アルツハイマー)病に効果ありと、1月の米国に続いて、今月、日本でも正式に認められ、年内には健康保険で使えるようになる見通しだ。厚生労働省の専門部会で薬事承認がされたため、厚労省が正式に承認することが決定した。Alzheimer型認知症患者の脳では、特殊な蛋白質異常から神経細胞が壊れ、脳が急激に萎縮し神経細胞が失われていく。脳全体にアミロイドβ(amyloid-β)とタウ蛋白質Tau protein)という異常な蛋白質が蓄積すると、神経細胞が徐々に死滅し、脳の働きを低下させ、脳幹委縮が進行して発症することが分かっている。

 

 製薬大手エーザイと米国の医薬品大手Biogenが共同開発したAlzheimer病治療薬Lecanemab (レカネマブ)は、amyloid-βが繊維状の塊になる前のprotofibrilと呼ばれる段階で、人工的に作った抗体を結合させて取り除くのだそうで、神経細胞が壊れるのを防ぎ、病気の進行そのものを遅らせる効果があるという。しかし、臨床試験(治験)では、薬を18カ月投与して、初期段階のAlzheimer病患者の症状悪化を27%抑制したので、より進んだ段階の症状に進行するのを2~3年遅らせることができると推定されるだけだから、この薬を継続投与すれば、病気が完全に治るというものではない。

 

 amyloid-βに加えて、Tau蛋白質も同時に除去しなければAlzheimer病を克服するのは難しいようだ。幸い、amyloid-βやTau蛋白質という二つの蛋白質は、発症の20年以上前から集積が始まることが分かっており、画像検査で、血液中の微量なこれらに関連する蛋白質「ペプチド(peptide)」を高精度で検出して、初期のAlzheimer型認知症を早期診断する血液バイオマーカー検査のようなものが近い将来実用化しそうだ。PET検査による画像でもamyloid-βの蓄積状況を確認することができるので、血液検査とPET検査により、早期発見が実現する可能性がある。そして、世界の製薬会社がこぞってamyloid-βを除去する薬、Tau蛋白質を除去する薬を開発しようとしており、何年後かは分からないが、そのうち、人類はAlzheimer病を制御できるようになるだろう。

 

 米国で承認された年間の薬剤費US$26,500(約390万円)を基に、厚労省は日本の薬剤費を決めることになるが、このような高価なLecanemabでも、初期のAlzheimer病患者の症状を遅らせる効果しかない。そのうえ、中期・後期の患者には全く効き目がない。しかも、初期のAlzheimer病は、本人も気が付かないほど軽微だから、PET検査で発見するしかないが、病気でなければ保険を使ってPET検査ができない。せっかくいい薬があるのだから、なんとか初期の段階の患者には、使い勝手のいい制度を適用してもらいたいものだ。そして、もう一つのTau蛋白質の薬も、誰か早く開発してくれますように。