アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

アルゼンチンの混乱は終わるか

 インフレ率143%の南米アルゼンチン(Argentina)で、新大統領が選ばれた。退任する現職大統領Alberto Fernándezは中国寄りの左翼政権、この左翼政権で経済大臣を務めるSergio Massaと右翼の自称「無政府資本主義者」(anarcho-capitalist)Javier Mileiが対決した、先月19日の決選投票で56%の支持率で当選したのは、既存の政治体制をぶっ潰すと叫んだ無名の経済学者Milei(53才)だった。

 

 自分が大統領になった暁には、中央銀行を廃止し、通貨pesoを米ドルに換えてhyper-inflationをなくす、中国やBrasil(現大統領は共産主義者Lula da Silva)のような共産主義国との貿易取引は断絶し米国と協調する、Vatican(現Francisco教皇はArgentina出身)は共産主義を推進する悪魔に乗っ取られているなどと過激な発言をして、若者などに変化を訴え当選したMileiだが、国民の貧困率40%~50%という世界最大の債務国の大統領の前途は多難だ。

 

 中南米特有の汚職・不正など新大統領の権限で撲滅させるとは思われず、中央銀行によるpeso紙幣の輪転機を止めることにより高インフレが終わるというものでもないし、そもそも自国通貨pesoを廃止して米ドルを採用するとしても、必要とされる$350億~$500億(6~7兆円)はどこから借り入れることができると言うのか。しかも中央銀行を廃止するには憲法も改正し国会の議決も必要だ。下院で14%、上院で10%しかない新大統領の小さな政党(Libertad Avanza=自由の前進)にはその力はない。

 

 はっきりしているのは、国民は既存の政治家に何も期待することができずにほぼ半世紀ほど経過しており、今回は、大津波のような巨大な変化を求めて、極端な主張をするMileiに投票したということだ。1966年にcoup d'étatが起こり、その後軍事政権が続いたり、左翼政権に代わったりしているうちに、1982年には英国とFalklands戦争が起こり、経済はますます疲弊して、2001年には経済危機から国家財政が破綻(default)、IMFから巨額の融資を受けるまでになった。そんな中で、現左翼政権は労働者保護、貧困対策、年金増額などの小手先の政策で国家財政を運営しているものの、貧困率40%~50%で絶望の淵にいる国民は、誰でもいいから大きな変化をもたらしてくれる大統領を選んだというわけだ。

 

 12月10日に正式就任だが、その日が近づくにつれ、新大統領は現実主義に修正しつつあるようで、選挙公約をどこまで実現できるのか大いに見ものだ。