アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

生ハム論争

イタリア人は、世界一おいしい生ハムはイタリアのパルマ製だと信じているから、本当は、世界一はスペインのハブーゴだと教えて、実際に食べさせても、素直にそれを認めようとしない。パルマの生ハム(prosciutto di Parma)は非常に生っぽく、塩をたくさん使っているから、しょっぱすぎて、メロンなど甘い果物と一緒に出てくる。メロンのない時期はイチジクが一緒に出たりする。 
 
それに比べてスペインの最高級品ハブーゴの生ハム(jamón de Jabugo)は生っぽくなく、燻製でもなく、塩をそんなに使っていないから、生ハムだけを味わって食べることができる。赤ワインと jamón de Jabugo は口の中で程よく溶けて、最高の贅沢な組み合わせだ。Jabugo で育てられている豚は爪が黒い種類だから多少イノシシと混ざった豚なのかもしれないが、その生ハムの味の秘訣は、生前の豚様が食していたドングリの実の量にあり、野生に近い環境で育てて、たくさん運動をさせたものを生ハムの原料にするのだそうだ。
 
しかもドングリの実100%で育てた生ハムは5Jという最高級で、値段ももちろん最高に高い。3Jはエサの50%がドングリの実、1Jならエサの15%以上がどんぐりの実などと、同じ Jabugo でも1Jから5Jまで細かく格分けされている。5Jは1kg=数万円もして、しかも1年前から前払いした人でなければ入手できないというから、資金の余裕あるハム屋とかレストランでないと仕入れることもできない。20年ほど前のBarcelonaのレストランでも、5Jを置いているところは4-5軒しかなかった。
 
ある時、Parmaの生ハムが世界一だと信じているイタリア人(シャツの技術者)を5Jのあるレストランに連れて行き、jamón de Jabugoの味はパルマの生ハムと比較してどうかときいたところ、悪くはないが自分はprosciutto di Parmaの方が好きだと言ってJabugoの味を認めようとしなかった。スペイン人はイタリアの生ハムは塩がきつすぎてそんなにおいしくないと批判する。一緒にいたポルトガル人にParmaJabugoのどちらがよりおいしいと思うかきいたところ、ポル人は断然Jabugoだというから、日・西・ポ対伊で、3:1、スペインの生ハムの勝ちとなった。
 
ポルトガル人の話では、Jabugoで飼育している豚は全てポルトガルで生まれた子豚を連れて行っているのだから、jamón de Jabugoはスペインとポルトガルの共作であるという。子豚が、もともとどこから来ているのか真相は不明だが、とにかく生ハムはイタリアよりもスペインの方が絶対においしいとは、イタリア人以外の全ての人々の共通認識だ。スペインが世界に誇る食べ物、それはイタリア人以外の万人が認めるjamón de Jabugoだと思う。Jabugoの気候が、あの絶妙な味を出すハム作りに最適なのだそうだ。そういえば、干柿を作る気候も適当に風が吹いて空気が乾燥している時期でなければならないから、Jabugoでもいい干柿を作ることができるのだろう。うちでは、生ハムを作る原料を飼育していないから、せいぜい渋柿を吊るして、最高の品質の干柿を作ることにしよう。ぜんざいの味を理解しないイタリア人は、干柿の味にも反応しないだろう。これは純粋な日本の味なのかもしれない。