アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

中台の同床異夢

16日、台湾国会(立法院)議員と次期総統選挙が行われた。習中国との歴史的会談を実現した馬現総統の国民党は大敗し、圧倒的勝利を勝ち取った民進党(Democratic Progressive Party)の女性法学者・蔡英文新総統(59才)が5月に誕生する。台湾史上初の女性総統は、11月米国で初の女性大統領が誕生する歴史の始まりのようだ。
 
人口2,300万人の台湾は、過去にはオランダの植民地、清の統治、日本の統治と幾多の変遷を経て、蒋介石率いる南京国民政府「中華民国」となる。第二次世界大戦戦勝国中国は蒋介石の中国であり、毛沢東率いる共産中国ではない。1949年、毛沢東中国は中華人民共和国を設立し、台湾の中華民国も自国の領土の一部であると主張する。一方の台湾は、自分たちこそが元々第二次世界大戦戦勝国であり、敵視していた毛沢東政権の傘下に入ることは自己否定となる。
 
狭い海峡を挟んで、両岸に位置する島国台湾と広大な土地を持つ中国は、ライバルとして、一時期、台湾のGDPが中国のGDPを上回っていた時期もあり、台湾が中国を経済的に吸収合併できるタイミングもあったが、その後、中国が伸びてきて、今では、人口13.5億の中国が小国台湾を吸収合併しても不思議でないほどの格差がついている。
 
両国の間には1992年、当時の関係者が合意した「九二共識」(1992 consensus)という口頭の合意があるらしい。中国は、台湾も中国の一部と主張するから「中華民国」という国も呼称も認めていない。中台は一体であり、一つの中国しかないと主張する。台湾は中国に「中華民国」という呼称を認めさすため、「一中各表」を「九二共識」の中身であると主張する。一中各表とは、中国はひとつだが、我々(台湾側)はそれを中華民国と述べ、中国はそれを中華人民共和国と述べるという趣旨だ。いずれ将来両者が合併した際はどちらの呼称を使うか、その時決めればよいという意味だろう。それに対して、中国は「九二共識」の中身は「一中原則」であると主張する。一中原則とは、中国は一つしかなく、それは中華人民共和国だけだというもの。
 
このような認識の違いを共通の認識(合意、consensus)というのは大いに問題があるが、とりあえず争点は棚上げし、経済交流を進めようと、国民党馬政権は中国との経済協定を進め、両岸経済協力枠組み協定につなげようとしていた。そうすれば、小さな台湾は間もなく中国に完全に牛耳られることになるだろう。(だからこそ台湾の学生が猛反対していた) 今回の選挙で圧勝した民進党の蔡新政権は、台湾経済をこれ以上中国に依存するのをやめて、日米の参加するTPPや東南アジア連合との結びつき強化を狙う。
 
習中国にとって、独立志向(やんわりと「現状維持」という)の強い民進党蔡新政権は、一つの中国の中の癌であり、これまでのように東シナ海南シナ海で他国にちょっかいばかりかけている場合ではないかもしれない。一方の台湾にとって習中国は軒下に住み着くシロアリのような存在、排除すべき対象だ。我が国こそが唯一の正統派と双方が思うことを「九二共識」と言うようだ。